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第七話 ②

Auteur: 上守葉
last update Date de publication: 2026-01-25 19:00:09

「和穗ちゃんって、丈夫なのねぇ。びっくりしちゃったわ」

「……本当ですね」

「ふふっ。さぁ、いきましょう?」

 にっこりと笑顔を浮かべる霧子さんに、俺もぎこちなく笑みを浮かべる。

 笑みになっているかどうかは、わからない。

 けれど、こういう場面では笑うべきだと、そう教わったから、無理にでも口角を上げる。

『笑顔は無敵パワーの源なんだよ』

 そんな事を言っていたのは、帳先生だ。

 先生はずっと灯楼にこもっているのに外来語にも詳しくて、パワーとはなんですかと聞けばケラケラと笑った。

 おかげで俺も少し外来語を学び始めたが、本当に一体どこで言葉を覚えてくるのだか。

 俺は、震えかけていた自分の膝を叩いておさめると、背筋を伸ばす。

 しかし、戻ろうかと日向子にかけようとした言葉は、彼女が俺の羽織の背をきゅっと握っていたことで喉の奥に消えていってしまった。

 霧子さんは、動かないでいる俺と日向子には気付かずに、書庫の入口に向
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  • 灯火の番   第十五話 ③

    「普段僕たちが相手にしているのは夜住でしょ。でもここに落ちてくる人間の数は減るどころか、増えてるんだよね」「それは……誰かが……?」「そー。何かが故意に殺して、もしかしたら夜住にしてるのかもしれないね」 絶句して、神風さんが口元に手を当てる。 しかしその目は死体の幻影から外されることはなく、徐々に広くなっていくように感じる地下室の全てを見つめているようだった。 オロチに関わる死者と、先生は言っただろうか。 つまりここに居る死者たちは──オロチと関わった霧子さんが殺した可能性もあるって、ことなのか? 優しくて頼もしかった霧子さんの姿が、先生の語る霧子さんと重ならない。 先生は「自分に信用がなかった」と言っていたが、神風の封庫であの霧子さんを見ていなかったら、俺も先生の言葉を真っ直ぐに受け止められたかどうか。 最年長の刀主として俺達を見守ってくれていた霧子さんを、疑えた、だろうか。「……ま、信じなくてもそこはしょうがないよ。いきなり言われてびっくりしてるだろうし」「……え」「もうちょっと行った所に神守の封庫があるから、そっちも見よっか。入るのは面倒だけど、君たちなら大丈夫だと思うよ」「せ、んせい」「……どっちを信じても、僕は君たちの意見を尊重するよ」 まるで心を読んだような先生の言葉に、俺は咄嗟に言葉が出てこなかった。 しくじった、と思っても、もう遅い。 違うんだと、貴方を疑ったわけじゃないと言いたくても、言葉が出てこなければ無意味だった。 せめて俺は、俺だけは、先生の言葉を即座に受け入れなければいけなかったのだ。 先生は、慰めて欲しいなんて決して思っていないだろう。 けれど、でも、霧子さんのことで衝撃を受けたのは間違いなく先生も同じだったはず。 先生は、斬られた当事者だ。 その事実を周囲に聞き入れてもらえなかった

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  • 灯火の番   第十五話 裏切り、謎めき

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  • 灯火の番   第八話 ②

     それでも、和穗が俺の手を握り返そうとした動きを、手の中で感じた。 指先がピクリと動き、しかし握ることまでは出来ないようでただ俺の手の甲だけを少しだけ引っ掻く。 動くんだ。 実感すると、目の奥がズンと熱くなる。 さっきまでの目の痛みとは違う、鼻の奥までツンとくる熱さだ。「しばし時間はかかるだろうが、動くようにもなるだろう。大丈夫だ」「ありがとうございます、神風さん。和穗お前、ほんっと……頑丈だな」「えへへ。すぐだよ、すぐ」「あ、そうだ。廊下にハルと|深神《ふかみ

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    「ソウくん、日向子ちゃん。そこに居る?」 俺たちが何も言えずに黙り込んだことで会話が途切れたと察したのか、治療室の中から帳先生の声が聞こえた。 ほんの少しだけ開いている治療室の戸。 指1本分も開いていないけれど、それでもさっきまで完全に閉ざされていたことを思うと、安堵する。 その隙間から漂ってくるのが消毒薬だとか、血錆のような匂いであったとしても、嬉しいことだ。「居ます。戻りました、先生」「はいっといで~。もう大丈夫だからね」「……っ失礼、します」 おそ

  • 灯火の番   第七話 ③

     日向子も続いて封庫を飛び出すと、扉がしっかりと閉じるのを確認してから後を追ってくる。  封庫の扉は、酷く重そうな、鈍い音を立てて閉ざされ、鍵もハッキリと重々しく、ガチャリと閉まった。  こんな音、聞き逃すわけがない。    雪の積もる渡り廊下を駆けると、渡り廊下の雪が新雪なのにも、背筋が冷たくなった。  俺たちを呼びに封庫に入ってきた霧子さんは、俺たちより先に外に出たはずだ。  そしてこの封庫までの道はほぼ一直線で、別邸内はともかく外に出たり本邸に戻るのなら、この渡り廊下を通るしかない。  なのに、髪を

  • 灯火の番   第七話 幻惑、誘惑

    「明神様? どうかなさいましたか?」 「い、いや……」 目に手を当てたままぼんやりとしていた俺を、不思議そうに日向子が覗き込んでくる。  彼女に、相談をするべきか。  口を開きかけて、噤む。    今日あったことや見たものは、まだ帳先生にも相談をしていない。  先生も俺が見た擬態した夜住のことには気付いているだろうし、和穗のこともちゃんと見ていてはくれたはずだ。  でもまだ、それらについて話は出来ていない。  そんな余裕もなかったし、最初に俺たちを陥れようとした御神苗の

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